概要 金融投機や経済発展の物語に翻弄されるのではなく、そこから解放される道があると、サンフランシスコ州立大学のエイミー・バンは主張している。 バンは、People of colorの作家たちによるスペキュラティブ・フィクションこそが、新しい未来を切り拓く鍵…
バーチャルYouTuberを視聴するとき、私がまなざす対象の一つは、そのアバターである。アバターが動いている。もう一つ、私が耳を向ける対象は声である。動画内の、あるいは歌声の。あるいはさらにしばしばバーチャルYouTuberはゲームプレイをしているので、…
パフォーマティビティとは何か? 発語内行為や発語媒介行為を発語行為以外にも拡張可能だ。レイ・ラングトンが論じるポルノグラフィの言語行為論的分析は、画像提示内行為や画像提示媒介行為と理解できる(cf. Langton 1993)*1。 一般化し「表現内行為」「…
日本ではそれほど十全に紹介されていないクリップ理論(身体的・認知的インペアメント、ディスアビリティの解釈、分析を通して、健常性規範に挑戦する枠組み)の中で、とりわけ、ニューロクィア(neuroqueer)という概念は、じわじわと、確実に広がっている…
人間の生き方には4種類ある*1。 物語的自己:なんでも物語にしてしまう。「動機は?」「意味は?」「つながりは?」 ゲーム的自己:なんでもゲームにしてしまう。「どっちが強い?」「いま効率的?」 おもちゃ的自己:なんでもおもちゃにしてしまう。「どん…
『問題と企画』(1972)は、米哲学者ネルソン・グッドマンによる論文集である。彼の『現象の構造』(1951)、『事実・虚構・予言』(1955)、『芸術の言語』(1968)に続いて、4冊目の出版物である。以前の著作を再録したり、著作で扱った問題を論じていたり…
グッドマンの世界制作論について 米国哲学者、ネルソン・グッドマンの知名度は、哲学研究者、しかも、プラグマティズム研究者や分析哲学研究者以外(特に科学哲学と美学)にはものすごく低いだろう。 しかし、彼の「世界制作」論、それと関連する「記号シス…
">イスタヴァン・チチェリー-ロナイ・ジュニア(Istvan Csicsery-Ronay JR.)による『SFの7つの美(The Seven Beauties of Science Fiction)』は、SFジャンルに特徴的な7つの魅力を星座を辿るように論じていくSFスタディーズの重要書である。 ">SFを好んで…
「家父長制(patriarchy)」とは何か*1 縁談が家名の下に進められる。役所の手続きで夫婦同姓を強制される。男性において称賛される勇敢・自由・自律といった振る舞いを女性が行うと非難される。避妊用ピル/緊急避妊薬の販売や流通許可の決定権を男性が持っ…
生の有意味性の哲学を読み、人間の美学の構想が生まれた。 人間の美学(Aesthetics of Human Beings):人間が人生の中で展開する、道徳的価値や美的価値や認識的価値といった枢要な価値や達成をはじめとする価値を下支えしそれを芳醇にする生の有意味性とい…
廃墟はなぜわたしたちを魅了するのかについての美学研究をしました。美学者の難波です。 2021/05/22に第13回応用哲学会のワークショップ「廃墟と亡霊たち」にて、広島工業大学の萬屋博喜さん(ヒューム・哲学)と京都大学の松永伸司さん(ゲーム研究・美学)…
廃墟鑑賞の美学:廃墟鑑賞とは、過去を想起し、人の手による偉大な建築がいつかは滅びることを未来に予感し、そして、現在において、半ば壊れ、蔦や草木が繁茂する廃墟と向き合うことなのだ。
1. 認知詩学とはそもそも何か 2. SFスタディーズの理論派 3. 目次と各章紹介 第一章:出発点:方向と地図。 第二章:マクロ:古い未来 第三章:ミクロ:フューチャープレイ 第四章:マクロ:外宇宙 第五章:中間点、回顧と予期 第六章:ミクロ:ニュー・ワー…
『ポルノグラフィの何がわるいのか』という修士論文を書きました。 間違えられますがバンドの「ポルノグラフィティ」ではなくて。性的な画像とか映像とかのポルノグラフィです。それの何がわるいのか。現代美学と呼ばれる学問からアプローチしました。 この…
こんにちは。現代美学を研究しています難波優輝です。分析美学を手がかりにポピュラーカルチャーの分析と批評を行なっています。 2020年9月19日から翌20日にかけて、オンライン上にて開催された哲学研究者若手フォーラムにおいて、SFが現実についてのいかな…
はじめに SFスタディーズの英語文献のハンドブックやコンパニオンをリストにしています。じぶんの勉強用でもあり、また、SFを研究したいと思うひとの参考になれば。 はじめに Seed, D. ed. 2008. A Companion to Science Fiction (Blackwell Companions to L…
文学の哲学は、存在論、認識論、倫理学、心の哲学、そして美学から、哲学的に文学を考察する研究ジャンルである。 物語とは何か、物語は人生の何を教えてくれるのか、作者とは誰か、詩的想像力とは何か、フィクションとは何か、詩の深遠さとは何か、キャラク…
はじめに ラウトリッジコンパニオンの『フェミニスト哲学』*1の第二部と第三部の各章と関連する事項についてのメモを記載している。 はじめに I. 身体、精神、世界 1. セックスとジェンダーの社会的構築 2. ジェンダー反 / 本質主義 3. 身体性 4. 物質性 5. …
はじめに こんにちは。神戸大学人文学研究科修士課程在籍の難波優輝です。1月25日に大妻女子大学にて開催された「描写の哲学研究会」(松永伸司さん主催)にて発表した「これは人間ではない––––キャラクタの画像の何がわるいのか」のかんたんな解説と資料…
こんにちは。分析美学と批評の研究と実践を行なっております難波優輝です*1。2019年のおしごとを執筆したものを中心に振り返ります。おもしろそうなものがあればぜひチェックしていただければハッピーです*2。 おしゃれとペルソナの哲学 おしゃれの美学––––…
名前 ナンバユウキ 連絡先 Twitter: @deinotaton プロフィール 分析美学を手がかりとして、フィクション、批評、そして芸術と倫理との関係を研究しています。特に、現在は人間とキャラクタの表象についての理論の構築に関心を持っています。また、批評に美学…
はじめに こんにちは。難波優輝です。2021年、神戸大学大学院人文学研究科博士課程前期課程修了(文学)、 感性と表現に関する哲学的問いの調査・解決・教育サービス〈ソフィスト〉を行っております。 おかげさまで2019年は9月から2年目となりました。 本記…
はじめに こんにちは。神戸大学大学院人文学研究科博士課程前期課程所属、分析美学の研究と批評を行なっている難波優輝です。これまでに『ユリイカ』『ヱクリヲ』『vanitas』などに論考を寄稿してきました。 現在は、修士論文に向けて、「ポルノグラフィと社…
はじめに こんにちは。神戸大学大学院人文学研究科博士課程前期課程所属のナンバユウキです。分析美学とポピュラーカルチャーを研究しています。 先日、2019年7月27日にYouTube上で行った「361°アートワークス配信「バーチャル美少女学のための10のガイドト…
はじめに こんにちは。神戸大学人文学研究科、芸術学専修、現在修士課程一年のナンバユウキです。分析美学を手がかりにポピュラーカルチャーの分析と批評を行なっています。 2019年7月13日から翌14日にかけて、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合…
はじめに じぶんが分析美学の研究をはじめるにあたって、芸術の哲学、分析美学の研究者の森功次さんの記事「分析美学にはどのようなトピックがあるのか」*1におおいに助けられました(森 2015)。そこで、本稿では、音楽の哲学、音楽美学をはじめようと考え…
はじめに 本稿は、分析美学の(ひとつの)質問箱にて受け付けた質問に答える記事です。分析美学に関するトピックに興味のある方の参考になれば。 はじめに 質問1:落語と幻想文学 質問2:正しい批評 質問3:メタ分析美学 注 質問1:落語と幻想文学 Q.1:「友…
はじめに 詩(poetry)とは何か、詩は翻訳できないのか、詩の形式と内容とはどう関係しているのか、詩における「わたし」とは誰か、詩の真理と深遠さとは何か、歌詞、詩、短歌、これらのジャンルにはどのような特徴があるのか。こうした問いを哲学的に問う学…
はじめに:論文制作の方法を問うて何がうれしいのか 論文はいかに作られているのか、論文はどう作るべきなのか、どのような構成要素から論文の制作は成り立っているか。こうした論文の制作に関する問いを仮に「論文制作」に関する問いと呼ぼう。論文制作に関…
はじめに 入門書の邦訳、重要な著作の翻訳、入門記事の充実などにみられるように、分析美学への日本語でのアクセス環境も整ってきました*1。分析美学を手がかりに研究している者のひとりとして、いろんなひとが分析美学に触れ、そのおもしろさを味わう機会が…