2024-01-01から1年間の記事一覧
政治哲学者John KekesによるModerate Conservatism: Reclaiming the Center. 2022. をおもしろく読んだ。最後の章の冒頭を訳す。この本のだいたいの言いたいことが分かるだろうし、含蓄に富んでいるからだ。原文は一つのパラグラフだが、適宜改行を行う。 デ…
はじめに 私たちは日々、動物たちを美的に鑑賞している。 鳩がホームにいる。首を前後に振りながら軽快に歩き、素早く地面に頭を下げては何かをついばんでいる。「そこに食べるものなどあるのだろうか?」と私たちをしていぶかしめる。 病院の待合室に水槽が…
犯罪学者ジェームズ・ウォルシュによる「例外的な日常:テロと日常生活の兵器化(The exceptional everyday: terror and the weaponisation of daily life)」という非常に興味深い論文を読む。「日常生活の武器化」とは、日常的にありふれたもの(やかん、…
はじめに 誰かが自分を愛しているかどうかをどうやって知ることができるのか。これは近年「愛の認識論」として盛り上がりをみせるトピックである(cf. Stringer 2024)。 最新の論文の一つ、ライアン・ストリンガーによる「How will i know if he really lov…
サイトウユリコの三部作 日常美学において強い存在感を放つサイトウユリコの『Everyday Aesthetics(日常美学)』『Aesthetics of the familiar: everyday life and world-making(親しいものの美学:日常生活と世界制作)』『Aesthetics of care: Practice …
これは、私がミュージックビデオ論を書くにあたり探したミュージックビデオ論基本文献リストである。ごく簡単なものであり、研究を尽くすものではないが、しばしば名前が挙がる文献をリストアップしているので、ミュージックビデオ研究をしっかりやりたい人…
お買い物は様々な美的経験をもたらす行為である、と私は主張する。 私はお買い物が好きである。私は美学者である。美学者というのは日常的な経験(料理や仕事)から非日常な経験(観劇だったり旅行だったり)まで、あらゆる経験における美的な要素を捉えたり…
はじめに たいへんおもしろかった。文化を生み出し動かすのは「ステイタス」への欲求とステイタスを創り出す無数の戦略である、と主張する文化論。カルチャーが好きな人は読むと不愉快になりつつも身の振り方の参考になるかもしれない。 https://amzn.to/3SM…
友人が本の読み方について質問をしてくれた。自分にとっても有益だったので対話をほぼそのまま公開する。 Mさん さいきん文章を自分がどう読んでいたのかまるで思い出せないので、きちんと体系化された文章の読み方と分析の仕方を身につけ直さないといけなさ…
山野弘樹『VTuberの哲学』(2024、春秋社)は、「本書は、今日のVTuber文化の中で活躍するVTuberの典型的な特徴を抽出し、その特徴をある統一的な観点から体系的に解釈することを試みる著作であ」り(i)、その目論見に従って、全5章にわたりバーチャルYouTu…
概要 金融投機や経済発展の物語に翻弄されるのではなく、そこから解放される道があると、サンフランシスコ州立大学のエイミー・バンは主張している。 バンは、People of colorの作家たちによるスペキュラティブ・フィクションこそが、新しい未来を切り拓く鍵…
バーチャルYouTuberを視聴するとき、私がまなざす対象の一つは、そのアバターである。アバターが動いている。もう一つ、私が耳を向ける対象は声である。動画内の、あるいは歌声の。あるいはさらにしばしばバーチャルYouTuberはゲームプレイをしているので、…
パフォーマティビティとは何か? 発語内行為や発語媒介行為を発語行為以外にも拡張可能だ。レイ・ラングトンが論じるポルノグラフィの言語行為論的分析は、画像提示内行為や画像提示媒介行為と理解できる(cf. Langton 1993)*1。 一般化し「表現内行為」「…
日本ではそれほど十全に紹介されていないクリップ理論(身体的・認知的インペアメント、ディスアビリティの解釈、分析を通して、健常性規範に挑戦する枠組み)の中で、とりわけ、ニューロクィア(neuroqueer)という概念は、じわじわと、確実に広がっている…