『問題と企画』(1972)は、米哲学者ネルソン・グッドマンによる論文集である。彼の『現象の構造』(1951)、『事実・虚構・予言』(1955)、『芸術の言語』(1968)に続いて、4冊目の出版物である。以前の著作を再録したり、著作で扱った問題を論じていたり、続く『世界制作の方法』(1978)における世界制作論の萌芽が見られたりする。全体としては、460ページほどあり、色々なトピックに関心のあるグッドマンらしい論文集の趣がある。邦訳は、何かしらの偶然が重なれば実現するだろう。しかし、グッドマンの読者はまだそれほど多くはないので、まずは読者を増やさなければならない。
インターネットに転がってはいなかったので、目次とその翻訳を載せておく。少しでも関心を惹いたなら幸いである。
ちなみに、各章には、それぞれの論文についての説明や発表当時の状況、他のグッドマンの論文へのリンクなどが記載されている。自著解説は往々にしてそうだが、グッドマンの哲学理解にわりあい役立つような内容になっている。
それを受けて、目次の訳のところで、難波の方でざっくりと内容を書いている。概ね適当なことを書いているので、つねに改訂される。
『問題と企画』ネルソン・グッドマン
序
I 哲学
グッドマンの哲学観を紹介するパート。2. は後の『世界制作の方法』を予感させる。特に5. 6. は、第二次大戦を終えた憂鬱な雰囲気があり、文章では軽快なダジャレばかりを言うグッドマンにしては意外な感じがする。
II 起源
1. は『芸術の言語』で取り扱われるようなシンボル論の序章となる論文であるという意味で起源であり、前半二つは彼に先行する哲学者のレクチャーで、後半二つは彼の生徒であったノーム・チョムスキーについての批判をしているという意味で「起源」に関わる。
III 芸術
-
芸術と真正性
-
芸術と探求
-
手段としてのメリット
-
『芸術の言語』注記
-
さらなる注記
-
ゴンブリッチ『芸術と幻影』のレビュー
1. は『芸術の言語』からの再録。その他は、『芸術の言語』の注記や発展する話題など。
IV 個体
グッドマンの分析哲学らしさのある個体(individual)についてのテクニカルな議論が詰まっている。私はグッドマン研究を行うつもりだが、まだ全然分からない。こわグッドマン。
V. 意味
-
時間の話
-
意味の類似性について
-
意味のいくつかの差異について
-
翻訳の疑似テストについて
1. は『現象の構造』のアレンジ版。意味について論じている。何を論じているか意味はよく分からない。
VI 関連性
- について
- 「について」の誤り
何かしら「A is about B」に関わるような話をしているようだが、私には今の所、何についての話をしているのか分からない。レベルを上げてから訪れるタイプのダンジョンだろう。
VII 単純さ
『世界制作の方法』でも重要概念として現れる「単純さ(simplicity)」についての議論がまとまっているもの。ここもテクニカルな議論がちらほらあり、恐怖を覚える。しかし、単純さは正しいバージョンの重要な要素のひとつなので、怖がってばかりもいられないだろう。
VIII 帰納
-
確証についての問い合わせ
-
確証説の欠点
-
帰納の新しい謎
-
投射可能性理論における改訂 (with Robert Schwartz and Israel Scheffler)
-
帰納的翻訳
-
『事実、虚構、予言』へのコメントへの応答
-
ライヘンバッハ『記号論理の要素』レビュー
-
雪片とごみ箱
3. は『事実、虚構、予言』からの抜粋。愛される「グルーのパラドクス」に関わる話が目白押しである。リストの内容から予測すると、帰納について話しているようだが、私の予想が正しいのかは判明でない。
IX 類似性
- 無関心からの順序
- 類縁性への7つの非難
類似性(similarity)も、批判込みで、グッドマンの中で重要な位置を占める概念。確かワインバーグ『科学とモデル』で2. は引用されていた気がする。
X パズル
真実の語り手と嘘つき
実はグッドマンは論文を発表する以前に有名になっていた––––匿名で1931年に『ボストン・ポスト』に投稿したある論理パズルによって。中身を聴けば、「ああ、あれか!」となるようなタイプのパズルである。これを論文集の最後に収録するユーモアのセンスは、まさにグッドマンという感じである。
Ploblems and Projects, Nelson Goodman
Introduction
I Philosophy
- The Revision of Philosophy
- The Way the World Is
- Some Reflections on the Theory of Systems
- Reviews of Urmson’s Philosophical Analysis
- Descartes as Philosopher
- Definition and Dogma
II Origins
- Sense and Certainty
- The Epistemological Argument
- The Emperor’s New Ideas
- Reviews of Armstrong’s Berkeley’s Theory of Vision
III Art
- Art and Authenticity
- Art and Inquiry
- Merit as Means
- Some Notes on Languages of Art
- Further Notes
- Reviews of Gombrich’s Art and Illusion
IV Individuals
- A World of Individuals
- Steps Toward a Constructive Nominalism (with W. V. Quine)
- A Revision in The Structure of Appearance
V. Meaning
- Talk of Time
- On Likeness of Meaning
- On Some Differences about Meaning
- On a Pseude-Test of Translation
VI Relevance
- About
- “About” Mistaken
VII Simplicity
- The Test of Simplicity
- Recent Developments in the Theory of Simplicity
- Condensation versus Simplification
- Reviews of Craig’s “Replacement of Auxiliary Expressions”
- Elimination of Extralogical Postulates (with W. V. Quine)
- Safety, Strength, Simplicity
- Science and Simplicity
- Uniformity and Simplicity
VIII Induction
- A Query on Confirmation
- On Infirmities of Confirmation-Theory
- The New Riddle of Induction
- An Improvement in the Theory of Projectability (with Robert Schwartz and Israel Scheffler)
- Inductive Translation
- Replies to Comments on Fact, Fiction, and Forecast
- Review of Reichenbach’s Elements of Symbolic Logic
- Snowflakes and Wastebaskets
IX Likeness
- Order from Indifference
- Seven Strictures on Similarity
X Puzzle
The Truth-Tellers and the Liars