Lichtung

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「SFの驚異の技法」資料公開、そして、SFについてどう語るか

こんにちは。現代美学を研究しています難波優輝です。分析美学を手がかりにポピュラーカルチャーの分析と批評を行なっています。

2020年9月19日から翌20日にかけて、オンライン上にて開催された哲学研究者若手フォーラムにおいて、SFが現実についてのいかなる洞察をどのように与えるかを論じる「SFの驚異の技法––––サイエンス・フィクション小説における認識的価値いかにしてもたらされうるのか」を発表しました。

資料

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引用例:難波優輝. 2020. 「SFの驚異の技法––––サイエンス・フィクション小説における認識的価値いかにしてもたらされうるのか」2020年度哲学研究者若手フォーラム, <https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/download/293105/cc0f1c396aaa2414b3f2b9da39d60e7a/19566?col_no=2&frame_id=603867>.

内容

目指したのは、SFの哲学と、SFスタディーズと、SF実践のファーストコンタクトです。

SFと洞察は、さまざまな仕方で語られてきました。ですが「SFが何をどうやって教えてくれるのか」をあらためて哲学的に分析する営みとしての「SFの哲学」は見られません。本稿では、チャレンジングであると同時に、価値のある試みとして「SF小説は、わたしたちにこの現実についてのどんな洞察を、いかにしてもたらしうるのか?」を中心に研究を行いました。

SFを研究するSFスタディーズにおいて、理論的な古典として評価され、同じだけ批判もされているだろうダルコ・スーヴィンの『SFの変容』の議論を紹介するというのも動機としてあります。

SFについて考えるとき、実践からどれだけ離れずにいられるかは重要です。特に重要な点として、2020年8月23日、SF作家の草野原々さんと共同で企画し、自分が司会進行を担当したYouTubeライブ配信「SF×美学––––SF作家は分析美学者の問いにどう答えるか?」でいただいた、6人の現代SF作家の方々からのお答えに強く影響を受けています。

参加されたのは、大滝瓶太さん、草野原々さん、柴田勝家さん、高橋文樹さん、宮澤伊織さん 、麦原遼さんで、特に、冒頭では、宮澤伊織さん、草野原々さんのコメントを受けて、SFと知について語ることの意義と問題を、最後に、麦原遼さんのコメントを受け、SFに認識的価値を見出す問題を考えています。

SFについてどう語るか

哲学の発表としては、哲学論文の引用は少ないです。むしろ、SF作家へのインタビュー、SFスタディーズの再解釈、そして、自身による『スローターハウス5』批評という、盛りだくさんで論考を進めていく形式になりました。自分ではかなり気に入ったスタイルのひとつになりそうです。もしかしたら、美学の論文を書くときは、まずインタビューから始める、なんていう習慣ができたらおもしろいかもしれません。

SFという実践を研究するとき、わたしはいろいろなことを考えています。ひとつはSF読者として。読んだSFのおもしろさに打ちのめされている瞬間。ひとつに研究者として。SFのおもしろさを研究の文脈で解剖してみたいと思うとき。さいごにSF批評家として、SFの価値を分析し、どうにか他人に伝えたいと思うとき。

わたしは読者・批評家成分が強い研究者です。SFを研究するなら、書き手や批評家に何らかのヒントを手渡せればと思っています。そのためには、SFスタディーズや美学において良い研究の仕方に乗りつつ、しかし、外在的な実践への役立ちという価値をも目指すという無謀な試みをやってみる必要があります。たのしくて仕方がないので、まだまだやるつもりです。

そのためには、どうやら自分でさまざまな語り方を作り出していかなければならなさそうで、わくわくしています。