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難波優輝|美学と批評|Twitter: @deinotaton|批評:lichtung.hateblo.jp

SFスタディーズ:コンパニオン・ハンドブックリスト

はじめに

SFスタディーズの英語文献のハンドブックやコンパニオンをリストにしています。じぶんの勉強用でもあり、また、SFを研究したいと思うひとの参考になれば。

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Seed, D. ed. 2008. A Companion to Science Fiction (Blackwell Companions to Literature and Culture Series). Wiley-Blackwell

  • 第一部:分野をサーベイする
  • 第二部:トピックと論争
  • 第三部:ジャンルと運動
  • 第四部:サイエンスフィクションと映画
  • 第五部:国際的なシーン
  • 第六部:キーとなる著者
  • 第七部:読解

632頁。メディアとしては、映画がとくに注目されている。他のコンパニオンにはみられない著者ごとの項目がある(ウェルズからグレッグ・イーガンまでの9人)。また、さいごに各作品の読解の項目がある。

James, E. and Mendlesohn, F. eds. 2003. The Cambridge Companion to Science Fiction (Cambridge Companions to Literature), Cambridge University Press.

The Cambridge Companion to Science Fiction (Cambridge Companions to Literature)

The Cambridge Companion to Science Fiction (Cambridge Companions to Literature)

  • 発売日: 2003/11/20
  • メディア: ペーパーバック
 
  • 第一部:歴史
  • 第二部:批評的アプローチ
  • 第三部:サブジャンルとテーマ

328頁。歴史の項目が目立つ。サブジャンルの項目が10項目、平均10頁ほどあり充実している。

Bould, M., Butler, A. M., Roberts, A. and Vint, S. eds. 2009. The Routledge Companion to Science Fiction (Routledge Literature Companions), Routledge

  • 第一部:歴史
  • 第二部:理論
  • 第三部:問題と挑戦
  • 第四部:サブジャンル

576頁。歴史の項では、小説としてのSFのみならず、テレビやマンガ、映画の歴史も論じられている。理論の項では、批評理論に限らず、ファンスタディーズなど幅広い。第三部は第二部と重なる部分もありそうだが、環境主義やアニマル・スタディーズ、音楽など、メディア論と交差する研究領域からのアプローチが見られる。サブジャンルでは、コンパクトな紹介で、どのような作品や歴史があるのかを概観できる。

Latham, R. ed. 2014. The Oxford Handbook of Science Fiction (Oxford Handbooks), OUP.

  • 第一部:ジャンルとしてのサイエンスフィクション
  • 第二部:メディウムとしてのサイエンスフィクション
  • 第三部:文化としてのサイエンスフィクション
  • 第四部:世界観としてのサイエンスフィクション

620頁。ブラックウェルのコンパニオンと並んで最大のもの。第一部のジャンルの紹介は、「市場」「文学運動」などが入り、ラウトリッジのやケンブリッジのものがより網羅的か。第二部の様々な表現形式についての紹介の網羅性と量は有用だろう。第三部、第四部は、サイエントロジーカウンターカルチャー、レトロフューチャリズムといった文化、そして、啓蒙思想ダーウィニズム、アフロフューチャリズムなど、世界観という切り口でひじょうに興味深い。

おわりに

SFスタディーズは、英米圏でかなりの発展を遂げているようだ。日本においてもゆたかなSF文化を整理し、諸外国に向けてアピールするひとつの経路としてアカデミックな回路は重要になるだろう。じぶんの専門は美学であり、じつのところSFスタディーズにおいては、それほど目立った研究領域ではなさそうに見える。逆に言えば研究しがいのあるアプローチだ。じぶんは美学と哲学のアプローチから、文学研究・映画研究・メディア研究・科学史を専攻しているひとびととともに日本におけるSFスタディーズを盛り上げていければと思う。