Lichtung

難波優輝|美学と批評|Twitter: @deinotaton|批評:lichtung.hateblo.jp

おしごとさがし

はじめに

こんにちは。神戸大学大学院人文学研究科博士課程前期課程所属、分析美学の研究と批評を行なっている難波優輝です。これまでに『ユリイカ』『ヱクリヲ』『vanitas』などに論考を寄稿してきました。

現在は、修士論文に向けて、「ポルノグラフィと社会的公正」をテーマに、ポルノグラフィを例として、表象やフィクションが現実に与える影響とその倫理的問題を研究しています。

また、昨年から、アイドル、バーチャル/YouTuberに代表される、メディアを介した人間の現れを「メディアペルソナ」として概念化し、こうしたペルソナと鑑賞者との関係や鑑賞実践を「層状の文化」と呼び、幅広く研究を行なっています。

本稿では、準備中のテーマをリストアップしています。お仕事のご依頼の参考にして頂ければ幸いです。

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プロフィール

連絡先:Twitter: @deinotaton

Mail: deinotaton☆gmail.com(☆を@に変えてください)

分析美学を手がかりとして、フィクション、批評、そして芸術と倫理との関係を研究しています。特に、現在は人間とキャラクタの表象についての理論の構築に関心を持っています。また、批評に美学の道具立てを応用する試みを行なっています。

(a)準備中のテーマ

以下、準備中のテーマを提示しています。これらは文献を集めたばかりであるか、他の執筆と同時に調査しているものです。

じぶんのペルソナ研究プロジェクトには直接関与しないため、原稿の依頼がない限り、優先順位は低いです。ぜひご依頼をお待ちしております。

(1)食の美学

・「おいしい」とはどういう経験か/理想的な鑑賞者の条件とは何か/倫理的にわるい食事とそのおいしさとはどう関係するのか/食事は美的経験か。

「おいしさの構造」

「おいしい」にはいろんな経験がある。辛くておいしい、苦くておいしい、甘くておいしい。あるいは、さくさくしておいしい、なめらかな舌触りがおいしい、さらには、後味がおいしい、鼻に抜ける香りがおいしい。単に舌の味覚器官に与えられた情報のみならず、香りや触覚もそれおいしさの経験を形作るものだ。このように「おいしい」には多様な経験が伴うが、いったい「おいしい」という経験とはどのような経験なのだろうか。それは「湯船につかってあたたかくて気持ちいい」や「音楽を聴いて心地よい」とは違った経験であり、甘さや苦さには尽くされない経験である(甘いだけでおいしくない。苦いだけでおいしくないという経験はふつうにある)。すなわち、おいしいという経験は、少なくとも、(1)快と結びついているが、それに尽くされず、(2)特定の味に尽くされない。おいしいという経験を美的経験の側面から分析してみよう……

(2)感傷とノスタルジアの美学

・感傷とは何か/セカイ系やノスタルジックな恋愛シミュレーションにおけるノスタルジアはなぜ心地よいのか/感傷には心の痛みや喪失感を伴うのに、なぜ心地よいのか/感傷やノスタルジアは非難されるべきなのか。

「存在しない思い出に向かって」

夏の日、親戚の家の縁側、どこまでも続く向日葵畑、風に吹き上げられて飛んでいく白い帽子の影……わたしたちは、なぜ、経験したこともない思い出を思い出し、感傷に浸ることができるのだろうか。本稿では、分析美学における感傷に関する議論を手がかりに、わたしたちに挿入される存在しない思い出を分析し、その分類と、独特の美的経験の諸相を明らかにしたい。それは、存在しないはずの記憶を共有することでひとびとを動員するノスタルジアの危険と美学とを再考する手がかりとなるだろう……

(3)怪異譚と怪物の美学

・ネットロアやフォークロア特有の美的経験とは何か/ホラー映画と異なる怪異譚の特徴とは何か/SCPなどの特定の怪異譚の美的価値について/怪異譚は世界についてのなんらかの真なる命題をもたらすか。

「怪異譚と真理」

怪異譚はなぜこわいのだろうか。ネットロアを読む恐怖は、よくできたホラー作品を読む恐怖とは、どこか異なっているように思える。それは、フィクションをフィクション然として読む経験ではなく、いつのまにか現実から現実でない世界の法則へと足を踏み入れてしまった恐怖ではないか。だとすれば、それは、フィクション論における語りの真理のあり方と、その受容の分析の道具立てを用いてよく分析できるはずだ。本稿では、分析美学の視点から、怪異譚がほかのホラージャンルとどのように異なるのかを明らかにしたい。そうすることで、わたしたちは、怪異譚と伝聞、そしてフェイクニュースとの間の思わぬ連関を見出すことになるだろう……

(4)ショッピングモールの美学

ヴィレッジヴァンガードニトリ無印良品、フードコート、GU、スタジオアリス好日山荘といった店舗とひとびとのライフスタイルの交錯を描く。

(b)骨格ができたテーマ

以下は、すでにブログ記事を執筆しており、また、ある程度読むべき文献が定まっているテーマです。

(1)詩の哲学/入門

(2)聖地巡礼の美学

その他のご依頼について

以上のテーマにとどまらず、様々なテーマやトピックに関するご依頼をお待ちしています。特に、詩、音楽(特にポップス)、サブカルチャー作品に関する考察が得意です。

おわりに

わたしは、現在、サブカルチャー文化の解説にとどまらず、その現象を経験しているひとはどのような経験をしているのか、それを整理し、その文化を経験していないひとへと開いていくような文章を執筆しています。それはたんに文化や作品の紹介ではなく、それに対する批判や反応も含めて、文化の発展に寄与するはずです。

また、ポピュラーな対象にアカデミックな意匠を施して、「芸術的価値」のお墨付きを与えるのではなく、ポピュラー対象がそれ自体で考察に値する価値や問い、さらには倫理的問題を投げかけていることをあらためて提示することで、その意義と問題と開いてゆくことを目指しています。

こうした立場は特定のものであり、わたしの個人的なものですが、制作者ではないわたしがわたしとして、文化に対してもたらすことのできる貢献だと考えています。

文化の解説のみならず、その価値を見出し、あるいはその問題に光をあてようとするとき、哲学的なアプローチはそのお力になれるはずです。ぜひ、分析美学の視点から文化の研究と分析のお手伝いさせてください。

難波優輝(美学)Twitter: @deinotaton