Lichtung

ナンバユウキ|美学と批評|Twitter: @deinotaton|批評:lichtung.hateblo.jp

ポルノグラフィをただしくわるいと言うためには何を明らかにすべきか:資料公開と感想記

はじめに

こんにちは。神戸大学人文学研究科、芸術学専修、現在修士課程一年のナンバユウキです。分析美学を手がかりにポピュラーカルチャーの分析と批評を行なっています。

2019年7月13日から翌14日にかけて、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催された哲学若手研究者フォーラムにおいて、二日目に分析哲学と分析美学からポルノグラフィの倫理的問題の問いの場と、そのわるさの理由を分析する「ポルノグラフィをただしくわるいと言うためには何を明らかにすべきか」を発表しました。

本稿では、第一に、資料公開とその簡単な内容紹介、じぶんの研究における位置づけをご紹介し、第二に、発表した感想を共有します。

今回が修士論文に向けた公での研究発表の第一回でした。研究初期のアイデアを研究会を超えて本稿のようにブログで共有するのは、あまり見たことはないです。一般に修士論文の内容や計画を公に共有することも同様です。

ですが、その都度研究状況を共有したほうが、関心領域の一致する研究者と議論しやすくなるし、また、ひろく一般に、分析美学や分析哲学が何をやっているのかのアピールになるかなと考えたうえでの試みです*1。のみならず、発表の感想や改善点を共有する研究文化をつくっていきたいなという目論見もあります。

そう言う話は抜きにしても、ポルノグラフィ研究に関心があるひと、ポルノグラフィを哲学の視座から考えたいひと、ポルノグラフィの倫理や美学からの問題を問いたいひとに役立てばと思います。

資料と内容

資料

・資料はこちらで公開しています(PDF)。

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・引用例:難波優輝. 2019. 「ポルノグラフィをただしくわるいと言うためには何を明らかにすべきか」2019年度哲学若手研究者フォーラム、<https://researchmap.jp/mu7d22v55-2580832/#_2580832 >.

・資料は、適宜引用、言及、共有してくだされば。共有の際には元リンクを使用していただけるとうれしいです。どれくらい共有されたかがわかるので。

・略称は「ポたべき」です。ハッシュタグは、#ポたべき。

内容

・発表は、修士論文「ポルノグラフィと社会的公正––––定義、分類、虚構(仮)」を構成する要素として計画しています。第1章は、ポルノグラフィの定義論を概観し、第2章に、発表で目指したものを組み込めればと考えています*2

・発表の内容はおおきく二つから構成されています。第一に、「わるさフロー」の構築です。(1)「ポルノグラフィがわるい、と言われるときのわるさをめぐって争われる領域はどこか」(2)「わるさの理由とは何か」を整理しわるさの領域と理由の関係を整理する「わるさフロー」を構築を、言語行為論(レイ・ラングトン)、社会存在論(キャサリンジェンキンス)、趣味論(A・W・イートン)を参照しつつ目指しました。そして、第二に、わるさフローの中身を研究するアプローチとして現在考えているものを、とくに言語行為論の議論を手がかりに提示しました。

・参照領域は、全体として分析哲学です。第一のパートでは、言語行為論、社会存在論、分析美学の議論を、そして、第二のパートでは、言語哲学におけるヘイトスピーチや差別研究、分析美学における「画像と行為」*3の研究を意識しています。

なぜポルノグラフィなのか

・わたしはポルノグラフィが好きでたまらない、というわけではないですが、そのひじょうに独特な内容や扱われ方、そして倫理的問題との関わりに関心を持っています。広範に流布していながら、一筋縄ではいかないトピックとして、そして、その議論の際には、主たる専攻としている分析美学における画像、表象、虚構、鑑賞、情動、想像の問題にとどまらず、倫理学ジェンダー論、言語哲学、そして、ある種の政治哲学、法哲学との関わりを避けがたいトピックとして、そして、これらにひろく関心があるために、修士研究としてやりがいを感じています。

・上のような理論的関心のみならず、規制論などと関わる形で実践的にも関心があります。ポルノグラフィ規制論はどこまで正当な議論と言えるのか、あるいは、どこまで規制をすべきなのかを、直接的ではないにせよ間接的に議論するための土台を整理、構築したいと考えています。哲学や美学は規制に決定的な答えを与えるものではないでしょう。しかし、議論のためのインフラストラクチャを構築できると考えています。このインフラ整備のレベルにおいて、哲学や美学が「役立つ」とわたしは信じており、本発表がその一部をなす修士研究は、その信念をどこまで説得的に示しうるかの挑戦でもあります。いまだ道ははじまったばかりですが、どこまでいけるのか、わくわくしながら研究を進めています。

感想記

緊張

はじめての学会発表でした。何度か他の学会に参加したことはあり(応用哲学会や研究室主催の研究会)、ある程度学会というものの雰囲気は知っていたので、それほど緊張はしませんでした。

あと、ツイッタでかれこれ一年ぐらいの付き合いになるメンバーのひとが散見され、それも緊張を和らげた要因でしょう*4

オーディエンスの数と理由

・とてもありがたいことに40人規模の容量の部屋いっぱいにオーディエンスの方がいらっしゃいました。その理由として考えているのは、(1)ひろくトピックを扱うものであることをアピールしうるタイトルだった。(2)「ポルノグラフィ」の「わるさ」の問題というひろく関心を惹きうるタイトルだった。(3)ツイッタで宣伝していた*5。(4)知り合いのひとが来てくださった。の四つです。おそらく、(3)と(4)が大きな要因だろうと思っています。来ていただいたみなさまには感謝申し上げます。

・じぶんでじぶんの発表を宣伝するのは、発表が往々にして制作段階ゆえに緊張しますが、来ていただいて、コメントいただいてなんぼだと思うので、わたしは宣伝してよかったと思いますし、これからも継続して宣伝してきます。

資料の数と対策

・資料は、20部刷って行きましたが足りませんでした。それを見越して、QRコードを記載した資料も置いていました。

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・ただ、遅れて入ってきたひとは、急いでらっしゃるので、ペラ紙で置いていても気づかれにくいかもと思いました。発表中の進行のほうはじぶんでやっちゃえるので、しつれいながら、司会の方に入り口にいてくださるようお頼みして、ご案内をしていただくようにするのも手かな、と思いました。

発表の形式

読み上げ形式でいきました。とはいえ、語尾とかトーンはかなりしゃべり言葉に近くして、いらないところはばさばさ切っていったり、あるいは、前のほうのひとのしかめっつらを察知したときは、もうすこし例を足さないとむずかしいのかな、と判断して、追加で説明しました。分量は1万8千字ぐらいで、60分強発表、節ごとに軽い確認の質問を受け付け、さいごにまとめて質問を受け付けるかたちにしました。

喋り方

オーディエンスを見ながら、はっきりと大きな声で説明するよう心がけました。はやさについては、はやくちになってしまっていたな、と思うので、資料の分量とも兼ね合わせて、ここは改善の余地ありです。また、発表後に、「四隅をもっとみるとフロア全体をみている感じがしていいよ」というめちゃくちゃ具体的なアドバイスを頂いて助かりました*6

質疑応答

6人ほどの方に質問いただきました。他の研究会で質問していただいたことがあるひと、前日に発表を聞いたり話をしていたひとだったので、このひとはこんな質問のしかたをなされるよね、というのがわかっていたので、リラックスした環境でした。これがまったく初対面だと、またちがった緊張感がありそうですが。

全体

発表経験になり、様々な研究者の方と知り合えたし、また、課題も見つかったので発表してよかったです。若手で哲学を研究している方は、ぜひ、若手哲学研究者フォーラムに参加してみてはいかがでしょう。

フォーラムの運営のみなさまには、発表の場を準備していただき心より感謝いたします。司会の方には、司会を引き受けていただきありがとうございます。

あらためて、貴重な時間を割いて発表を聴きに来ていただいた、そして質問をしていただいたオーディエンスの方々には、心よりお礼申し上げます。いっしょに研究の時間を共有できてとてもたのしかったです。また議論しましょうね。

ナンバユウキ(分析美学と批評)Twitter: @deinotaton

*1:ただ、これができるのは、データそのものが発見になるというより、議論のしかたが評価されうる、そして、プレイヤの顔がおおむね知れ渡っている(分析)哲学/分析美学の特殊な条件に由来する気もする。

*2:ちなみに、第3章以降は、発表で提示したアプローチのいずれかを具体的に発展させていく予定です。

*3:このトピックにはかなり関心がある。修士論文とともに、他のジャンルの研究とも連動してこれから主題となるテーマ。画像と行為に関してはナンバにお任せくださいと言えるようになる。

*4:壇上から見渡すと、日本の分析美学者集めました状態だった。

*5:こんな感じ。

*6:哲学的論理学を研究しておられる方、ありがとうございます。