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勉強法とは何か? 学習スタイル論

critique Learning Style

はじめに

これは近年学術的に研究されている学習スタイル論を参照しながら、自分にあった勉強法とは何かを考えるノートである。
学習における勉強法の核となるものを捉えることを目的としている。

一般に勉強法は、話者の独断と偏見によって語られがちだが、本ノートでは、日常的・主観的な筆者自身の経験と学術的・客観的な学習スタイルの理論・統計データの両方を用いて、読み手が惑わされることなく、自分が納得する情報だけを持って帰ってもらえるようにしている。

このノートの読者としては、第1部、第2部の理論面では、「ある程度の勉強法は身につけているが、新しい分野や言語にそれを適用していいか分からない」あるいは「いろいろ勧められるんだけど、勉強法ってなにが効率いいのか迷っている」という人を、第3部の実践面では「英語を実際に使う必要があるためもう一度能力をブラッシュアップしたい」という人を想定している。

では流れを説明しておこう。前述したようにこのノートは3部構成をとっている。まず第1部では「学習スタイル論」とは何かを学び、それから第2部では具体的な5つの学習スタイル論を学ぶ。最後に第3部で、英語学習を例にして、すぐに実践できる具体的なストラテジーを例示する。それぞれの部分は違うページになっている。
時間に余裕のある方や理論的な興味がある方は順番に、テクニックが必要な人は最後のみを読むと良いだろう。

第1部  学習スタイル論とは何か

そもそも、学習スタイルの研究がどうして必要なのかを考えてみよう。
わたしたちが学習という言葉で想像するシュチュエーションは、まず教室のイメージかもしれない。しかし、学習するのは教室だけでなく、みんなでやる––ファミレスや、放課後家に集まって、あるいは、ひとりでやる––スタバや家で。他にも教師がいるのか、独学か。こういったさまざまな組み合わせがあり、どれが自分に合っているかも異なる。そう考えると、公教育から広がっていく、無数の学びのヴァリエーションがあるのだ。そこで、これまでの教育法にとらわれず、どんな学び方がどんな人に適しているのかを探ろうという研究が「学び方の個人差という観点から、欧米、特にイギリスとアメリカで30年ほど前から盛んになされて」きた。

ここで注意しておきたいことがある。どんな学び方がどんな人に適しているかを探ることが学習スタイルの研究目的だが、学習スタイルという概念には2つの層があるということだ。それは診断と処方の層である。その人に適した学習スタイルを見つけ出すためには、まずどんな人なのかという診断が正確になされなければならない。そして、次に、その診断に応じて実際にどのような学習方法を選ぶべきか、すなわちどのような学習ストラテジー=学習者が言語を学習する際に行うさまざまな思考活動や行動を選ぶべきか、という具体的な処方が与えられなければならない。医療において、どれだけ正しい診断をしてもどの処方が適切かを決定できなければ無意味であるし、あらゆる処方の準備があっても診断できなければ無意味であるのと同様である。

学習スタイル研究の2つの側面

  • どんなスタイルをもった人がいるのか⇦理論的・心理学的:診断
  • どんなストラテジーがどんなスタイルに適切なのか⇦実践的・工学的:処方

ここで明確にしなければならないのは、実のところ、現状では、診断的・理論的研究はある程度の蓄積があるものの、処方的・実践的研究はまだまだ実用に足るものではないという点である。今回学習スタイル研究として紹介できるのは、診断面だけであり、処方面はほとんど触れられない。研究によって確実性が高いものについてはいくつか紹介できる。ただ、それらは確実であるがゆえに、一般的なもので、魔法のようにピンポイントであなたの学習スタイルに適合するものではないことをあらかじめ断っておく。

そして、紹介する学習スタイル論はいまだ決着をみていないもので、それぞれに弱点があり、どれか一つの理論が正しいと結論づけることはできない。しかし、正確な分類地図(ミクロレベルでの地図)を保留にして、共通してあらわれる分類を一応の地図(マクロレベルでの世界地図)として用いることで、対話の土台を共有するための道具として役立てることはできる。加えて、無意識に自分がどんな学習スタイルを取っていたかを再認識することで、洗練させたり別のスタイルを試すことができる。最後に(個人的に一番重要だと思うことは)、学習スタイル理論を学ぶことは、スタイルに優劣をつけたり、押し付けてきたりする人々に対して自分のやり方を守る有益な防衛手段となる。
現実的に言えば、現在うまくいっているものはそのまま続ければいい。うまくいっていないものだけここであげるような違うやり方を試せばいい。


学習スタイルを学ぶ意味

  • 学習スタイル理論を洗練させるための語彙や土台を共有する
  • 自分の学習スタイルを再認識する
  • 学習スタイルを押し付けてくる人々から自分を守る

診断〜どんなスタイルをもった人がいるのか

学び方の個人差がある、というのは当たり前のようで、深い問題でもある。いったいどこからその差が生まれるのか、差はどれくらい根深いのか、変化しうるのか。学習スタイル研究の理論的な目的は、学び方の差の原因をモデル化することにある。
英国の学習スキル研究センター(Learning&Skills Research Centre:LSRC)によれば、2004年までに学習スタイルに関する学術論文は3800以上に及び、71の理論が提唱されている。LSRCは、「そのうち最も影響を与えた13の理論を整理し、生来のものであり変化しがたい学習モデルと、外因によって変わりやすい学習モデルとの両極端の延長線上に5種類の学習スタイルモデルを提出した」。(図2)青木久美子. (2005).

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 図2の中で、最も左端のものが、学習スタイルは生来のものであると強く主張する理論であり、個々の学習スタイルを変えようとするより、個々の生来の学習スタイルに合わせて、学習環境を設定すべきである、とするものである。最も右端のものは、個々の学習に対する動機、外的要因、カリキュラムデザイン、授業形態、文化、評価の仕組み、等によって個々の学習スタイルは変化する、とするものである。

 それでは次に具体的に5つの学習スタイルモデルを概観しよう。

(第2部は後日作成。使用する学習スタイルの有益なまとめである青木の論文の直リンクは以下)

http://www.code.ouj.ac.jp/media/pdf2-1-3/No.3-18kenkyutenbou01.pdf

参考文献


青木久美子. (2005). 学習スタイルの概念と理論-欧米の研究から学ぶ. メディア教育研究, 2(1), 197-212.⇦日本語文献の多くに引用されている。はじめのガイドとしておすすめ。以下のCoffield, F., ・Moseley, D., Hall, E., & Ecclestone, K. (2004).の邦訳&まとめに近い。
・Coffield, F., Moseley, D., Hall, E., & Ecclestone, K. (2004). Should we be using learning styles? What research has to say to practice.⇦青木の論文で参照されているLSRCの論文。18ページほどで読みやすい。
・Coffield, F., Moseley, D., Hall, E., & Ecclestone, K. (2004). Learning styles and pedagogy in post-16 learning: A systematic and critical review.⇦上のものはこのレポートの要約。180ページあり、絶望的に長い。詳細が必要な部分だけ利用した。